今オレが、
世話になっている宿の近くに、
海水浴場がある。
冬だ。
誰も居ない海。
缶のハイボール、ぶら下げて、
一人で、よく来る。
テトラポットの上に座って、
缶ハイボールをチビリ飲る。
静かだ。
腹の中の、
“黒い虫”が、
消えていく。
静かだ。
何にも、
干渉されない、
オレの時間。
日が落ちて、
真っ暗になっても、
オレの心は、
穏やかだ。
心が、
クリアになっていく。
ふと。
引き戻される。
潮の香りが、
解らなくなった。
潮騒が、
うるせえ。
オレの時間を、
邪魔するな。
黒い虫ども。
ザワザワ、すんじゃ無ぇよ、
虫ども。
ブチ殺すぜ。
もう一本、
缶ハイボール買いに行くオレ。
“もう一本、いいだろ?”
誰かに、
問うオレ。
また、
冷たいテトラポットに、
腰据えるオレ。