オレが小さい頃、
うちは、きっと貧乏だった。
なんでそんな風に思うかといえば、
俺は、
訳あって一人っ子で、
とてつもなく甘やかされて育ったから。
お父ちゃんは、
生コンミキサーの運転手だった。
お母ちゃんは、
ずっと何かの“内職”をしていた。
俺が、物心付きだした頃、
あれが欲しい。これが欲しい。
あれやりたい。これやりたい。
お父ちゃん達は、何でもくれた。
きっと、
全力で、叶えてくれていた。
とっても可愛がってもらっていた。
でも、理由があった。
それは、
二人が亡くなってから知ることになる。
さっきね。
テレビで、
“殿さまキングス”
見たの。
思い出したんだ。
小さかった俺の家に、
立派な“ステレオ”があった事。
二部屋しかない、小さな団地。
その中に、不釣り合いな
立派なステレオセット。
殿さまキングスや、
エルピーレコードが、パタパタと立っていたのを
思い出した。
レコードが沢山並んでいたわけじゃない。
ホルダーに、
エルピーが数枚だ。
お父ちゃんが、たまに、
一人でずっと聴いていた。
お母ちゃんは、何も言わずに、
黙々と内職していた。
随分、稲築にも帰ってないね。
今まで、誰にも告げず、
こそっと墓参りしていたけど、
俺の、
人生が、
どうなるか、不安になって来たから、
いろんな事、
大切に生きてみます。
俺には、
親父が二人。
お袋が二人いるんだ。
人生、
粗末にゃぁ出来ねぇ。